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2009年7月 1日 (水)

「バーダー・マインホフ 理想の果てに」観てきました

 こちらのブログを更新するのは久しぶりです。1年間更新が滞るとブログが消えてしまうという話。なのでこちらにも記事をUPいたしました。

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 先日、『Der Baader-Meinhof Komplex』 の試写があり、一足先に見てまいりました。面白かったです!なんと2時間30分の長尺なのですが、長さを全く感じさせず、最後まであっという間でした。映画は1967年のパーレビ国王ベルリン訪問に反対するデモから始まり、1977年のルフトハンザハイジャック事件や実業家シュライヤー氏誘拐・殺害事件までの10年間を描いております。この10年間を2時間半に凝縮するのは、確かに大変だったと思います。が、ストーリーの展開に無理がなく、激動の時代がコンパクトにまとめられており、非常に分かりやすく仕上がっていた印象を受けました。テロリストのドンパチが多いため、派手なアクション映画と思われがちなのですが、さにあらず。監督の話では、実際に撃たれた弾の数を調べ、忠実に再現したとのこと。観客をひきつけるための大げさな演出ではなく、あくまでも史実に基づいたものと知り、むしろドキュメンタリーに近いという印象を受けました。
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バーダー・マインホフ 理想の果てに」東京ではシネマ・ライズさんで7月25日から公開だそうです。

(ムービーアイ様より画像の掲載の許可をいただきました。ありがとうございます)

 試写を見た感想を書くって難しいですね。映画ライターの方々の文章を読むといつも感心します。その作品が持つエッセンスをうまく感じ取り、文章にする難しさ。しかもネタバレ厳禁だし。以下、拙い文章ですが簡単なあらすじと感想を載せちゃいます。

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<簡単なあらすじ>

 時は1967年。イランのパーレビ国王のベルリン訪問に反対する若者たちがベルリンでデモを起こします。そこで悲劇が起きました。学生が警官に撃たれたのです(この警官が実は東ドイツ秘密警察の密偵だったということは、先日ちょこっと日記で書きました)。これをきっかけにデモは過激になります。折りしもベトナム戦争が泥沼化し、反米感情も高まっていたころ。のちにドイツ赤軍派(RAF)の初期メンバーとなるアンドレアス・バーダーがベトナム戦争に抗議し、仲間とともに百貨店に放火。そしてその後、逮捕されます。一方、ジャーナリストだったウルリケ・マインホフも左傾化し、激しい論調の手記を雑誌に投稿するようになります。

 やがてバーダーは仲間の手引きにより脱獄。そしてウルリケ・マインホフと出会うことにより、ドイツ赤軍派が誕生します。彼らは銀行強盗や爆弾テロを繰り返し、世間を震撼させます。そんなとき、ホルスト・ヘロルトがBKA(連邦刑事庁)長官に就任。コンピューターを駆使する最新技術を投入し、断固テロリストたちと戦う姿勢を見せるのでした。やがて初期のメンバーが次々と逮捕され、投獄されていきますが、RAFでは第二世代と呼ばれるメンバーが育っていました。

 投獄されたメンバーたちはハンガーストライキを決行。1名が死亡します。精神的に追い詰められた(・・・ように映画では描かれていました)ウルリケ・マインホフは独房の中で首を吊って自殺。その自殺をRAFメンバーは国家権力によって処刑されたと世論に訴え、獄中の仲間を釈放させるべく、さらにテロ行為を激化させるのでした。

 追い詰められたメンバーはパレスチナゲリラと組み、ルフトハンザ機181便「ランツフート号」のハイジャックを企てます。目的は仲間の釈放でした。しかし時のシュミット首相は断固たる態度で臨み、テロリストとの交渉や妥協を一切拒みます。そしてミュンヘンオリンピックのテロ事件での苦い経験を元に結成された警察の特殊部隊GSG-9投入を決定。そして突入の末、人質の救出に成功します。その知らせに落胆するメンバーたち。そしてその結末は・・・

<キャスト>
アンドレアス・バーダー(RAFのリーダー格です):モーリッツ・ブライプトロイ
ウルリケ・マインホフ(元ジャーナリスト。同じく、RAFの中心的存在):マルティナ・ゲデック
グドルン・エンスリン(RAFのメンバーで、バーダーの恋人):ヨハンナ・ヴォカレク
ブリギッテ・モーンハウプト(RAFのメンバー。2007年に釈放されています):ナディア・ウール
ホルスト・ヘロルト(BKA,連邦刑事庁長官):ブルーノ・ガンツ

 モーリッツ・ブライプトロイはすんごい存在感。彼が出てきただけで、画面の空気が変わったような気がしました。オーラ出てまっせ。彼を見ていると「演技をしている」という感じがまったくしません。役作りがうまいのか、それとも天性のカンで役になりきってしまうのか。とにかく難しい役を次々と完璧にこなす役者だな~と改めて感心。マルティナ・ゲデックも相変わらずの存在感。ノーメークに近いメークとボサボサ髪。独房で次第に精神のバランスを崩していく様を見事に表していました。見ていて感心したのがヨハンナ・ヴォカレク。この女優さんは昨年ドイツ映画祭で上映された「ノースフェース アイガー北壁」でも出ていたのですが、そのときは垢抜けない素朴な女優さんだな~という印象だったのでした。その印象が一変。ハマり役だったように思います。

 そのほかにも、アレクサンドラ・マリア・ララ(めちゃくちゃキレイ!以前より華やかさが増したような・・・)、ハイノ・フェルヒ(映画「トンネル」でトンネル掘った人。「ヒトラー最期の12日間」ではシュペーア軍需相を演じた俳優さん)、ハンナ・ヘルツシュプルング(初主演映画「4分間のピアニスト」でブレイクした女優さん)、トム・シリング(「エリート養成機関ナポラ」などで出てきた美少年)など、華やかな顔ぶれが見られました。

 この作品はテロリストたちを美化して描くこともなければ「巨悪」として描くスタンスでもなく、淡々と史実を追っているように思います。あの時代をどう判断するかは観客に委ねられているのでしょう。

 ドイツの戦後史のキーワードRAF。今まで、本などで読んだりはしたのですが、いまいちピンと来ませんでした。今回、この映画を観てRAFのことが少し分かったような気がします。彼らの主張には正直な話、共感できませんし、彼らが自分たちのイデオロギーを正当化して起こしたテロ行為にも嫌悪感を覚えます。それでも驚いたのは、彼らが放つすさまじいエネルギー。デモで学生に発砲した警官が実はシュタージの手先だったことが最近明らかになりましたが、仮にその事実が当時明らかになったとしても、別のきっかけでRAFは生まれていたんではないか、と思えました。そのくらい、彼らのエネルギーは激しかったのではないかと。地下にたまったマグマが吹き出るような印象を受けました。なぜ彼らはあのような行為に走ったのか。何が彼らをそうさせたのか。世間は彼らをどう見ていたのか。疑問は尽きないのですが、RAFを知るきっかけになったと思います。ドイツにご興味がある方は必見♪

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コメント

力作であって、かつ好感を感じたアーティクルだったのでコメントいたします。未見ですが前から観に行くことは決めています。

2007年の若松孝二監督作品『実録・連合赤軍 浅間山荘への道程』と対比されるべき作品だと思っていましたが、映評は雰囲気をよく伝えていると感じました。両作品の違いは監督のシンパシー(共感)の違いだろうという予測をも裏書きしてくださいました。

ウルリケ・マインホフが「自殺」したとされた後、膣から精液が検出されたのはご存知でしょうか。自殺ではなく監獄当局による強姦殺人の疑いが指摘されているんです。恐らくこういうシーンは黙殺されたのかな。

あの時代は激動の時代だったようです。パリの五月革命から始まって、ほとんどの西側先進国全域に波及した「運動」だったんです。

「ドキュメンタリーに近いという印象を受けました」というご感想に納得するところは大きかった。でも、そうであればあるほど、事実と異なる可能性は否定できません。表現活動はこわいな、と思います。

可能であれば、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督の『鉛の時代』(1981年ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作)をご覧いただきたいと思います。。ウルリケ・マインホフとその姉との葛藤が描かれていて圧巻です。

日本ではシンパシーを持つ監督の映画が成立し、ドイツでは政治意識のないノンポリが監督して映画ができあがったようです。10年ほど前までは逆だったと思うんですけれど、それは何故でしょう???

がっかりするだろうな、と予測しつつ観に行きます。

投稿: Devlin | 2009年7月25日 (土) 01時38分

★Devlin さん こんばんは。昨夜はご丁寧なコメントをありがとうございました。お詳しいですね。感心しながらコメントを拝読いたしました。
はい、どちらかというとドキュメンタリー的な要素の強い映画でした。見ていて「なぜこうなったのか」「彼らを生んだのは何だったのか」といった疑問が浮かんでくるのですが、監督はそれに対して個人的な見解を挟むことなく、淡々と史実を追っているような印象を受けました。どう受け止めるかは、見る側に任されているようです。昨日の日経の夕刊にこの作品の映画評が載っていたのですが、同感だと思ってしまいました。観客は見ている間中、「なぜ?」という疑問を抱くことになる、とありましたが、私もずっとそう思いながら見ました。あの時代を知らない世代の人にとっては、まさにそうなのかもしれませんね。
ウルリケ・マインホフらの自殺説には疑問符がつくということは、ちょくちょく読みました。どうして銃が持ち込めたのか、ということも説明がつかないそうですし…。ただ、それも史実と断言できるわけではないでしょうし、監督としてはボカした描き方をせざるをえなかったようです。

知識不足のため、私も完全に理解できていない面がありそうですが、あの時代を知るきっかけになったということで、とてもよかったと思っています。

投稿: ありちゅん | 2009年7月25日 (土) 20時11分

こんばんは。お返事いたします。レスポンスありがとうございました。

「淡々と史実を追っているような印象」・・・これが最も怖いかもしれない、という印象を受けました。その部分に情報操作があれば、映画の評価以前に、映画による世論操作が可能になると思いませんかす。アンドレアス・バーダーやウルリケ・マインホフのキャラクター設定如何で歴史の捏造が可能になる、ということになりませんか?

近日中に観に行くつもりですが、多数の映評や配給会社の宣伝を見るたびに気が重くなるばかり。

「観客は見ている間中、『なぜ?』という疑問を抱くことになる、とありましたが、私もずっとそう思いながら見ました」

それって、極めて巧妙な情報操作の手口だと思えてなりません。映画の作り方が、変化しつつあるのかも。どのような変化か俄かに指摘はできませんが、公正・中立・主観という点で非常に気になるところです。

投稿: Devlin | 2009年7月25日 (土) 23時27分

★Devlin さん おはようございます。昨夜はコメントをありがとうございました。なぜ、この作品をご覧になる前からそこまでネガティブに思っていらっしゃるのか、理由が分からないのですが、本作を含め、娯楽作品である以上、完璧に歴史を描くのは不可能ではないでしょうか。歴史上の人物など、誰が描いたって完璧に表現するのは無理だと思います。名作とされている過去の作品だって、完璧ではないと思います。ドキュメンタリー映画ならいざしらず、やはり娯楽作品ですし、監督が演出し、本人ではなく俳優が演技して作るものですから…。本作を見るかぎり、悪意を持って捏造したとは思えませんでした。また、脚本を担当したアイヒンガー氏の映画づくりに対する情熱は常々インタビューなどで見ていましたので、好感を持っております。そこに悪意や偏見はないと私は思いました。むしろ、シンパシーを持つ人間が撮ったほうが偏りや思い入れが出てしまうのではないでしょうか。

申し訳ないことに、私はあまり知識がありませんので、確かに映画から得られる情報は大きいです。でも、ブログでも書きましたように、私がこの映画から受けた感想は「なぜ、彼らはこれほどまでのエネルギーを持ちえたか」です。素人意見ですみません。ああいった激動の時代が確かに存在したことを観客に知らしめて歴史の風化を防ぐことこそ、この映画が持つ意義ではないでしょうか。

投稿: ありちゅん | 2009年7月26日 (日) 07時18分

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